本サイトにお越し頂きありがとうございます。
このサイトでは、私自身が心停止となった経験をお伝えしたり、救命法の普及活動について発信をしております。
今回は、改めて成人の心肺蘇生法の手順についてお伝えしてまいります。
心肺蘇生法の手順について
手順については、左の通りとなります。
・安全確保(周囲の安全確認)
・反応確認
・119番通報とAED手配
・呼吸確認
・胸骨圧迫
・人工呼吸(意思と技術があれば)
・AEDの使用
それぞれ説明して参ります。
「救命の連鎖」の重要性
手順の説明に移る前に、「救命の連鎖」の重要性についてもお伝えしなければなりません。
119番通報をしてから救急車が来るまで 何分かかる?
あなたは、119番通報をしてから何分で救急車が来るかを知っていますか?
正解は 約8分です(平均)。
地域によってはもっとかかることもあるし、逆に早く来るケースもあります。
この「8分」を早いと感じるか遅いと感じるか、人それぞれだと思います。
救命の可能性と時間経過
こんなデータがあります。
あなたはどのように感じますか?
「心停止」になると時間が1分経過する毎に救命率が10%下がる、というものです。
どうですか?
「8分」がとても長く感じられますよね。
何もせずに救急車の到着を待っているだけだと、助かる可能性がどんどん少なくなってしまうのです。倒れた人が「心停止」だとすると、一刻も早く救命処置をしなければなりません。
救命の連鎖とは
救命の連鎖とは、心停止という生命の危機に陥った傷病者を救命するためには、次の4項目が鎖のように繋がって行われることが必要であるということを表しています。
① 心停止の予防
心停止の予防とは、突然死の可能性のある傷病を未然に防ぐことです。
小児では交通事故や溺水などによる不慮の事故を防ぐことが重要です。
成人では心疾患、脳卒中、窒息、熱中症、運動中の心停止などの初期の兆候を見逃さず、それによって心停止に至る前に医療機関で治療を開始することが重要です。
② 心停止の早期認識と通報
心停止の早期認識と通報とは、突然倒れたり、反応が無い人を見つけたら、直ちに心停止を疑い、大声で助けを求め、119番通報、AED搬送を依頼し(協力者がいない場合は自ら119番通報、AEDを持ってくる)、救急隊等が少しでも早く到着するように努めることです。
③ 早い心肺蘇生とAED(一次救命処置)
早い心肺蘇生とAED(一次救命処置)とは、救助者が行える救命処置(今回はHands Onlyの心肺蘇生とAEDの使用)です。
心停止の傷病者の社会復帰に大きな役割を果たします。
④ 救急隊や病院での処置(二次救命処置)
救急隊や病院での処置(二次救命処置)とは、専門的な治療で心拍を再開させ、社会復帰を目指した高度な治療を行うことです。
その場に居合わせた人の応急手当が重要
倒れた人を見つけた場合は、この救命の連鎖のうち最も重要な真ん中の二つを担っております。
これから説明する心肺蘇生法を行うことで救命の連鎖を繋ぎましょう。
安全確保
傷病者(倒れている人)を発見した際にまずやること。
それは「周囲の安全確認」つまり、「安全確保」です。
周囲の安全を確認してから傷病者に近づき、可能な限り二次的危険を取り除きます。
また、傷病者が危険な場所にいる場合は、安全を確保したうえで、傷病者を安全な場所に移動させます。
ここで言う安全の確保とは何でしょうか。
私は以下の3つだと考えます。
- 自分自身に危害が加わらないか確認
- 周りの人に危害が加わらないか確認
- そのあとで、傷病者の安全の確保を行います
自分自身に危害が加わらないか確認
まずは、自分自身の安全確保が第一優先です。
救助者も損傷を負ってしまった場合は、救助が出来なくなるということを覚えておいてください。
周りの人に危害が加わらないか確認
その次に、自分の周りにいる人(家族や友人など)への安全確保も忘れてはいけません。
あなたが救助に行くことで、危険な状況に陥る人はいませんか?
例えば、道路で倒れている人がいたとします。
あなたは安全を確認した上で傷病者に近づき、傷病者を安全な場所に移動できたとします。
しかし、小さいお子さんがあなたを追いかけて道路に飛び出さないでしょうか。その時、安全を確保できているでしょうか。
あなたが人を助けるために、悲しい想いをすることがあってはいけません。
忘れがちですが、「周りの人に危害が加わらないか」も確認するようにしてください。
傷病者の安全の確保
安全が確保できていることを確認した上で傷病者に近づきます。
傷病者が危険な場所にいる場合には、あなた及び周りの人の安全を確保したうえで、傷病者を安全な場所に移動させます。
周囲の状況が変化し、危険が迫っていないか確認する
また、安全確保は一回やってお終いではありません。
周囲の状況が変化し、危険な環境が迫っていないかを常に確認することも重要です。
反応の確認
「安全確保」が出来たら、傷病者に近づき「反応の確認」をします。
反応確認のポイント
ここでは、傷病者が仰向けで倒れている場面を想像してください。
両肩を叩きながら「大丈夫ですか?」「わかりますか?」などと呼びかけます。
その時、返事、動き、瞬き、顔をしかめるなど、何らかの応答や目的のあるしぐさが無ければ
「反応なし」と判断します。
「わからない」「判断に迷う」場合
反応があるのか、それともないのか。
判断に迷う、もしくは「わからない」場合は「反応なし」と判断し、次の手順へ進みます。
119番通報とAED手配
「反応なし」と判断したら、次に
「119番通報とAEDの搬送を依頼」します。
大声で助けを求める
「119番通報とAEDの搬送を依頼」するために、まずは「大声で助けを求めます」。
これは非常に重要です。
講習では少し恥ずかしいですが、実際に倒れてる人に遭遇したらそうは言っていられません。
「誰か来てください!人が倒れています!」「誰か助けてください!」と大声で助けを求め、ことの重要性を周りに伝えましょう。
協力者が現れた場合
協力者が現れた場合は、
「あなたは119番通報をしてください」
「あなたはAEDを持ってきたください」などと人を指定して具体的に協力を求めましょう。
悪い例として、
「誰か救急車を!」とお願いしたとします。
この指示だと、協力者みんなが「誰かが救急車を呼ぶだろう・・・」と思い、結局誰も救急車を呼んでなかった、となりかねません。
救命の連鎖を繋ぐためにも、指示は明確にし協力者が行動しやすいようにしましょう。
救助者が一人の場合
救助者があなた一人の場合は、 まずは自分で119番通報をします。
携帯電話をスピーカーモードにして、通信指令員の指示が聞き取れるようにしましょう。
そうすることで、救急車を呼ぶだけではなく、電話で心停止の判断についての助言や胸骨圧迫の指導を受けることができます。
AEDが近くにある場合は、AEDを取りにいきます(通信指令員の指示に従ってくださいね)。
呼吸確認
次に、「呼吸確認」です。
呼吸確認のポイント
ここでのポイントは3つです。
- 傷病者の胸からお腹の動きをよく見て、
- 普段通りの呼吸があるかを
- 10秒以内に判断すること
順に説明していきましょう。
傷病者の胸からお腹の動きをよく見る
呼吸の確認となれば、顔を見てしまいがちですが、胸からお腹の上下動があるかどうかを見ます。死戦期呼吸と呼ばれる動きを、普段通りの呼吸と判断しないためです。
普段通りの呼吸がある
普段通りの呼吸とは、胸からお腹の動きを見て、明らかに呼吸があるとわかる状態を言います。
それ以外は「普段通りの呼吸が無い」と判断します。
死戦期呼吸とは
「死戦期呼吸」とは、死の直前の喘ぎ呼吸をいう。死戦期呼吸は、突然の心停止から数分のうちに生じることが多い。死戦期呼吸をしている傷病者は、通常、非常に早く空気を吸い込んでいるように見える。口を開けたまま、あご、頭、または首を動かすこともある。
10秒以内に判断すること
反応がなく、呼吸がしていないとすると、心停止の可能性が非常に高いです。
普段通りの呼吸であるかの判断は難しいかもしれませんが、迷って心肺蘇生が手遅れになることは避けなければなりません。
呼吸が無い又は死戦期呼吸、もしくは「わからない」場合は、「普段通りの呼吸無し」と判断し、胸骨圧迫を開始ます。
胸骨圧迫
なぜ胸骨圧迫が必要か
胸骨圧迫の前に、反応の確認、呼吸の確認を行っていますが、そこで反応なし、呼吸無し、と判断した人は、心停止の可能性が高いです。
心臓は全身に血液を送るポンプ機能がありますが、そのポンプ機能が停まってしまうと、その人はやがて死に至ってしまいます。
そこで、心臓のポンプ機能の代替ともいえる胸骨圧迫が必要となります。
胸骨越しに心臓を強く、速く押すことで、血流を生み出し、脳および心臓に血液を送るのです。
質の高い胸骨圧迫のポイント
ここでのポイントは4つです。
- 圧迫の深さ 約5cm胸が沈む程度
- 圧迫の速さ 1分間に100回~120回のテンポ
- 圧迫ごとに沈んだ胸が元の位置に戻るよう圧迫を解除する
- 胸骨圧迫の中断時間を最小限に(10秒以内)
十分な強さと、十分な速さで、絶え間なく圧迫する必要があります。
胸骨圧迫の位置
場所は、「胸骨の下半分の位置」となります。
胸骨ってどこ?という話ですが、目安としては
「胸の真ん中」です。
圧迫の方法
手のひらの付け根の部分を胸骨の下半分の位置に当ててもう一方の手を重ねます。少し手を反り返すようにします。
ここでのポイントは二つです。
- 一つ目は、肘を伸ばすこと
- 肩が胸骨の真上に来るように、覆いかぶさるようにすること
この二つをすることで、体重で押すことが出来て、疲れにくくなります。
胸骨圧迫を30回で1セットと考える
30回を1セットとして圧迫を行います。人工呼吸を行う意思と技術がなく、人工呼吸を省略する場合は、30回に拘らず連続して行います。
絶え間なく胸骨を圧迫することが最も重要です。人を交代する場合も中断時間が出来るだけ少なくなるようにしましょう。
人工呼吸
胸骨圧迫30回ごとに人工呼吸2回
フェイスシールドやポケットマスクなどの感染防護具を使用しても、しなくともよいです。
胸骨圧迫30回行うごとに、人工呼吸を2回行います。
1回ごとに胸が上がっていることを目視で確認しながら行う必要があります。
仮に、「胸の上がりが確認できなかった」としても、3回も4回も人工呼吸をする必要はなく、胸骨圧迫30回に戻ってください。
気道確保
人工呼吸を行う前に、気道を確保します。(下図)これにより、舌の付け根が喉の奥に落ち込まず、人口呼吸で空気を肺に送り込めるようになります。
- 片方の手を額に置き、もう一方の手の指を顎先の骨の部分に置く
- 頭を後方に傾け、顎先を持ち上げる。
気道を塞がないように、首や顎先の下の柔らかい部分を押し込まないようにします。
人工呼吸の方法(ポケットマスクなし)
ポイントは4つです。
- 引き続き気道を確保しながら、親指と人差し指で鼻をつまんで塞ぐ。
- 普段通りに息を吸い込む。傷病者の口を救助者の口で覆う。
- 人工呼吸を2回行う(1回につき1秒間息を吹き込む)。人工呼吸を行うたびに、胸の上がりを確認する。
- 胸骨圧迫の中断時間は10秒以内に抑えるようにする。
- 息を吹き込む量は、胸が軽く上がる程度です
胸が上がらない場合の対処
人工呼吸を正しく行うには、少し練習が必要です。傷病者に人工呼吸を1回行って胸が上がらない場合は、以下に従う。
- 頭を通常の位置に戻す
- 頭を後方に傾け、顎先を持ち上げて、再度気道を確保する
- その後、もう1回人工呼吸を行う。胸が上がることを確認する
うまく人工呼吸ができない原因
どうしても人工呼吸で胸の上がりを確認できない場合は、以下の原因が考えられます。
ちゃんとできているかチェックしてみましょう。
- 不十分な気道確保
- 鼻孔が塞がれていない
- 口の開け方が小さい
ポケットマスクとは
ポケットマスクは感染防護具の一つです。
プラスチック製で傷病者の口と鼻を覆い、救助者を血液や嘔吐物、感染から守ります。
個人的にはフェイスシールドを使った人工呼吸よりも、呼気が漏れにくく簡単です。
傷病者との物理的な距離もあるため、心理的なハードルが下がるとも言えます。
人工呼吸の方法(ポケットマスクあり)
- 傷病者の口と鼻を覆うようにマスクをつける。
写真のように先端が尖ったマスクの場合、マスクの細いほうの端を鼻梁に合わせます - 傷病者の顔にマスクを押し付けながら、頭を後方に傾け、顎先を持ち上げる。傷病者の顎先を上げて気道を確保する際は、顔とマスクの間に隙間を作らず、密閉状態にすることが重要である。
- 人工呼吸を2回行う(1回につき1秒間息を吹き込む)。人工呼吸を行うたびに、胸の上がりを確認する。
- 胸骨圧迫の中断は10秒以内に抑えるようにする。
普段からポケットマスクを持ち歩いている人は稀だと思いますので、職業上救護義務がある方等にご確認頂ければ結構です。
AEDの使用
AEDが届いたらすぐに使用しましょう。
AEDとは
AEDは日本語で、自動体外式除細動器といいます。
心電図の自動解析装置を内蔵した医療機器で、心電図を解析し除細動が必要な不整脈を判断し、電気ショックにより細動を取り除きます。
「心室細動」という心臓の心筋が無秩序に震えている心電図に対して有効で、心臓がポンプ機能を失っておりすぐに除細動(電気ショック)を行う必要があります。
AEDの使い方
AEDが届いたら、以下の2つのことを行ってください。
- AEDの電源を入れる
- AEDから流れる音声メッセージの通りに行動する
AEDの電源を入れる
AEDの電源の入れ方は次の二つのタイプに分けられます。
- 蓋を開けると電源が入るタイプ
- 電源ボタンを押す必要があるタイプ
蓋を開けて電源が入らなかったら(音声メッセージが流れなければ)、どこかに電源ボタンがあるはずですので、探してください。
AEDから流れる音声メッセージの通りに行動する
電源を入れると、使用方法をAEDが音声メッセージで指示をします。
この指示通りに行動してください。
具体的には
・パッドを貼る
・AEDが解析をする
・(必要に応じて)電気ショックのボタンを押す
という手順になりますが、
機種によって音声メッセージや手順が異なりますので、こちらに記載することは控えます。
AEDから流れる音声メッセージの通りに行動する、ということを覚えておいてください。
AEDの使用後
電気ショックを行った後(電気ショックを行わなくとも)、AEDの音声メッセージで
「胸骨圧迫と人工呼吸を再開するように」と指示があるはずです。
その指示に従ってください。
もし、次に挙げる心肺蘇生の中止時期を迎えたとしても、AEDの電源を切ったり、パッドを剥がしたりしないでください。音声メッセージでそのような指示は出さないはずです。
いつまで心肺蘇生を続けるか
それではいつまで心肺蘇生を続ければよいのでしょうか。
心肺蘇生の中止時期
- 救急隊員に引き継いだとき
- 傷病者に何らかの応答や目的のあるしぐさが現れたとき
- 普段通りの呼吸をし始めたとき
まとめ
いかがでしたでしょうか。
いざという時のために身に着けておきたい知識と技術ではありますが、読んだだけでは何とも・・・という方はぜひ講習を受けてみてください。
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最後まで読んで頂きありがとうございました。
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