このサイトでは、私自身が心停止となった経験をお伝えしたり、救命法の普及活動について発信をしております。
3月にメキシコ大使館で駐在員の方向けに心肺蘇生法とAEDの使い方について講習を実施してきました。その様子をご紹介したいと思います。
受講の目的
お話を伺ったところ、今回の受講の目的は1つ
AED導入当時に受けた使い方の説明を、現在勤めている職員に周知させたい
でした。
数年前にAED自体は導入をしており、当時も心肺蘇生法及びAEDの使い方は教わったそう。
しかし時期が空いたために復習と、当時在職していなかった方も使用できるようにと講習を開催して頂きました。
そのため、既に導入されているCU社製と同型のAEDデモ機を持参。いつものマネキン、「リトルアン」も持参です。
今回は感染症(新型コロナウイルス)への対策から、胸骨圧迫のみの心肺蘇生法の講習としました。
講習の進め方
私がスペイン語を流暢に話せたら良かったですが、大学での選考はフランス語でしたので断念(フランス語もダメです・・・)。
通訳の方に、逐一翻訳頂きながら進めていくというスタイルで進めました。
「デモンストレーションをやってほしい」という要望を頂いたので、
私が心肺蘇生法+AEDの使用に関して一連の流れを実践し、ご覧頂くことから始まりました。
その後、心肺蘇生法の重要性と、私自身が心停止になり周囲のサポートのお陰で蘇生できた話をさせて頂き、
「周囲の安全確認」から始まる一次救命処置の内容をそれぞれお伝えしていきました。
手順について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
マネキン相手にやってみよう!
参加された方全員に、マネキンの胸を押してもらいました。胸骨圧迫です。
ガイドラインに沿って、約5cmの深さで、1分間に100回~120回のテンポ、押したらしっかり戻す、を意識して。
「約5cm」の深さは、マネキンだと「カチッ」と音が鳴ります。その深さまで。
でも実際の人では「カチッ」とは鳴りませんので、押している人は深さを感覚で覚えてもらうのと、見ている人に客観的に5cm押せているか判断してもらいました。
「1分間に100回~120回のテンポ」は、今回はメトロノームを使いました。
このテンポは速くなりがちです。あんまり遅すぎる人はいません。
スペイン語で「もっとゆっくりでいいですよ。メトロノームの音を聞いて、テンポを合わせてください」と通訳の人に伝えてもらいました。
「押したらしっかり戻す」は、意識しないと出来ないことが多いので、私はイメージを強く持ってもらいます。
心臓が止まっている人に対して、外部から圧力をかけて心臓のポンプ機能の代替をするのが胸骨圧迫です。
「しっかり戻さない」で心臓が潰れたままだとすると、ポンプとして充分な機能しそうでしょうか?
しっかり戻すことで心臓内に血液が戻り、それを押してあげることで全身に血液を送り出すことができます。今回の皆さんは「しっかり戻す」はよくできていました!
倒れている人がコロナだったら?
今回、質問がとても多く、皆さんにとても熱心に受講頂きました。
その中で、「もし倒れている人がコロナウイルスに感染している場合はどうすればよい?」と質問がありました。
胸骨圧迫のみの心肺蘇生法ということと、3月時点では以下の暫定ガイドラインが無かったため、
「人工呼吸はせずに胸骨圧迫のみの心肺蘇生法を行う」「胸骨圧迫が出来ないなら、119番通報してくれるだけでも」とお伝えをしました。
現時点では、「救助者、倒れている人ともに口と鼻をマスクや布で覆ったうえで胸骨圧迫のみを行う」を推奨しております。
詳しくはこちらをご確認ください。
実物のAEDはどこにある?本当にデモ機と同じ?
質問の間に職員の方同士で話をされていました。
どうやら、AEDはどこにあるんだっけ?さっき触ったデモ機と本当に同じなの?と話をされているようです。
それから、私も含め皆さんでAEDが設置してある場所に移動しました。
実物をご覧になって、
「ここにあるのね!」「もう覚えたぜ」と言っているような感じでした。
しかし、私が持参したAEDデモ機とキャリングケースのデザインが異なっていたため、
「まださっき触ったデモ機と同じかどうかは信じていないけどな」という雰囲気です。
通訳さんから「ケースから取り出して、本体を見せてもらえますか」とオーダーが。
別に触ったからと言って爆発するものでもないのに、皆さんなぜか取り扱いに恐れているようでした。
ケースから取り出し、AEDデモ機と同じであると安心されたような表情をされていたのが印象に残っています。
今回のように「実物はどこにあるのか」「ケースの中はどうなっているのか」という疑問が出て、それを確かめるということは非常に良いと感じました。
「AED設置してます」というシールを見かけることは増えてきましたが、
実物がどこに置いてあるのかわからないケースや、シールやAED本体が景色となっていて意識していない人の目には入らないこともあります。
ともすれば今回の講習も「単なる講習」で終わった可能性がありますが、実生活の中に「AEDがある」と理解できたことで、
講習と現実の橋渡しができたのではないかと思います。
おそらく、今回参加された方は「目と体で覚えた」ため、AEDの設置場所を忘れることはないでしょう。
まとめ
今回は、メキシコ大使館で行われた講習に関してお伝えしていきました。
単なる講習から一歩進んだ「実生活の中にAEDがある」と体験してもらった講習となりました。
こういった講習を増やしていきたいと思います。
今は新型コロナウイルスの影響で講習を開催すること自体が難しいですが、収束したら活動の量を増やしていけるよう今できることを準備をしていきます。
補足
今回のCU製AEDは日本語のみのモードであったため、通訳及び日本人の方がいない場合に操作性に不安が残るとのこと。
他社製でバイリンガルのAED機があることをお伝えしておきました。
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